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不動産コンシェルジュのブログ

外国人投資が日本の不動産を崩壊させる?メディアが語らない“本当の問題”とは

2025-12-10 15:29:15
2025-12-10 15:44:37
目次

外国人投資家が日本の不動産市場にもたらす“静かな亀裂”

― メディアが語らない、現場で深刻化する運用トラブルの実態 ―

外国人による日本の不動産投資は、市場活性化のポジティブな側面ばかりが語られがちです。しかし、取引や管理の現場では、日本的な土地観・商習慣・地域コミュニティとの関係性を理解しない運用が増え、静かに、しかし確実に影響が広がっています。

この問題は センセーショナルにはなりにくい ため、メディアが大きく扱うことは稀です。しかし、現場では「見えにくい摩耗」が進行しています。

以下では、その“核心”を専門家の視点から整理します。


■ 1. 最大の問題は「土地・建物を資産ではなく“数字の箱”として扱うこと」

日本の不動産文化には、

  • 所有者が地域に一定の責任を持つ

  • 空き地や建物を“放置しない”ことが前提
    といった暗黙の合意が存在します。

しかし一部の外国人投資家は、土地や建物を 完全に金融商品としてのみ扱い、ローカルルールを軽視した運用を行います。

典型的な現場例

  • 土地を購入後「将来値上がりするまで完全放置」

  • 法定点検(消防、エレベーター、建物検査など)を無視

  • 空室率が高いままでも“利回りシミュレーション”だけを優先

  • 隣地との境界問題や雑草管理に無関心

  • 日本の入居者保護制度や近隣トラブル慣行を理解できない

結果、建物劣化・景観悪化・地域トラブルの増加につながり、自治体や管理会社が対応に追われるケースは確実に増えています。


■ 2. 「遠隔投資」ゆえの無責任化

── 実際の運用判断者が日本にいないという構造的問題

シンガポール、台湾、中国、アメリカの投資家に多いのが、
“名義は彼らだが、運用の実務は誰も責任を持っていない”
という状態です。

現場では次のようなトラブルが起こります。

● 管理会社の提案に返事がない

修繕、クレーム対応、災害後の確認依頼を送っても、
1〜3か月音信不通
というケースが現実に存在します。

● 意思決定の遅さが建物劣化につながる

日本のマンション管理組合では、修繕や共用部改善は「合意形成」が命です。しかし外国人区分所有者が

  • 連絡が取れない

  • 決済者が自国内で複数階層にまたがる
    という理由で、計画が停滞→管理組合全体に迷惑という事例も増加しています。

これは一般には語られませんが、管理会社や理事会では深刻な問題です。


■ 3. 法規制・慣習の理解不足が現場の摩擦を生む

日本の不動産運用は、法律と慣習が複雑に絡みます。
しかし外国人オーナーの中には、これを十分理解しないまま購入する人が少なくありません。

具体的には…

  • 「日本の借主は簡単に追い出せない」 を理解せず、退去トラブルが頻発

  • 民泊禁止エリアで黙認運用をし、近隣クレームが爆発

  • 電気容量・消防設備・用途地域などの規制を軽視

  • 不動産仲介会社に「母国基準」で強引に取引を迫る

国内では当たり前のルールでも、彼らにとっては「投資国ごとに違うルールの一つ」に過ぎません。

結果、近隣住民や管理会社の負担だけが増える構造が生まれています。


■ 4. 日本の「相手に迷惑をかけない」文化と真っ向から衝突

日本特有の風土には、

  • 相互扶助

  • 地域コミュニティとの調和

  • 迷惑をかけない行動規範
    といった価値観があります。

しかし投資目的だけの非居住外国人にとっては、
「そのコミュニティと関係を持つ必要がない」
という発想であることが多く、土地や建物は“ローカル文化から切り離された商品”として扱われがちです。

この価値観のズレが、より深い摩擦を生んでいます。


■ 5. 問題の本質:悪いのは“外国人”ではなく、

「日本の市場が受け入れ態勢を整えてこなかったこと」

現場で見えている本当の原因は、以下の3つに集約できます。

  1. 多言語対応や法制度説明が不十分なまま売買が進む

  2. 所有者責任を強制する仕組みが弱い(放置しやすい)

  3. 非居住投資家向けの管理・監督制度が未整備

つまり、問題の大半は「ルールが曖昧なまま投資を受け入れてしまった」ことにあります。


■ 6. 今後必要なのは「外国人投資の制限」ではなく

“責任を持つ投資”を求める制度の整備

具体的には:

非居住者向けオーナー義務の明確化(緊急連絡先・管理受託必須)
放置土地への強制管理制度
管理組合における外国人所有者の意思決定ルール整備
取引時の法制度説明の義務化(多言語で)

これらが整えば、外国人投資はリスクではなくむしろ市場の強化要因になります。


■ まとめ:

“問題の核心”は「文化の違い」ではなく「制度の不備」

日本の風土と外国人投資家の運用スタイルが噛み合わないのは事実です。
しかしそれは排外的に語るべき話ではなく、
制度が想定しきれていない状態で資本だけを受け入れた結果です。

現場で見えている問題は、メディアが取り上げる「買い占め」ではなく、
“管理されない不動産が増え、地域負担が高まっていること”
にあります。

これを改善できるかどうかが、今後の日本の不動産市場の質を左右します。

この記事を書いた人

raison d'être

不動産コンシェルジュ 大学卒業後、司法書士事務所および不動産会社にて実務を経験。平成12年に有限会社キートスエージェンシーを設立し、不動産売買仲介・不動産コンサルティング業を展開。 翌平成13年よりファイナンシャルプランナーとしての業務を開始し、現在は「独立系・中立の立場から」個人・法人双方の資産設計や財務戦略をサポートしています。 不動産とお金の両面から、最適な人生設計を提案する“トータルアドバイザー”として活動中です。 <資格> 法務大臣認証ADR機関 日本不動産仲裁機構 登録調停人候補者、CFP®(日本FP協会認定 J-90126303)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、宅地建物取引士、宅建マイスター、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、不動産キャリアパーソン、住宅ローンアドバイザー(5)第0601837号、少額短期保険募集人資格/損害保険募集人資格 <講師・役職歴> ・総合資格学院 非常勤講師(宅建講座・登録実務講習講師) ・東海地方の大学にて「資産運用講座」「相続講座」などを担当 ・(公社)愛知県宅地建物取引業協会 名西支部 副支部長(2012年度~) ・同協会 理事(2015年度~)、同協会 名西支部 評議員・幹事(2004~2011年度)