賃貸住宅のオーナー様、管理会社の皆様にとって、液化石油ガス(LPガス)契約の透明化は避けて通れないテーマになりました。
2024年に施行された液化石油ガス法(正式名称:液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)改正は、単なる業界ルールの見直しではありません。
不動産の収益構造そのものにメスが入ったと言っても過言ではありません。
本記事では、
改正の背景
何が変わるのか
不動産オーナー・投資家への影響
今後の実務対応
を、現場目線で分かりやすく解説します。
なぜ改正されたのか?―業界の“闇”が表面化
LPガス業界では、長年にわたり次のような慣行が横行していました。
ガス会社が給湯器・配管などの設備を無償提供
その代わりに入居者からのガス料金で回収
実質的にオーナーが負担すべき設備費がガス料金に転嫁
結果として、
入居者が知らないうちに設備費を負担している構造が常態化していました。
入居者は気付かないまま、
家賃
共益費
そして高めのガス料金
という形で、実質的に設備費を二重負担しているケースも少なくありません。
特に一括借上げや新築アパートでは、
「設備タダで入れますよ」という甘い提案が横行。
しかしこれは“タダ”ではありません。
将来の入居者が支払うガス料金に上乗せされているだけです。
大手ハウスメーカーや有名管理会社でさえ、この構造を前提に事業を組み立ててきました。
知っていて黙認していたのか、理解せずにやっていたのか——いずれにせよ問題です。
改正の核心:三つのポイント
① 設備費の外出し表示義務化(料金の透明化)
ガス料金を
基本料金
従量料金
設備費相当額
に区分して表示することが求められます。
つまり、
「ガス代が高い理由は何なのか?」
が明確になります。
これまでブラックボックスだった設備回収スキームが可視化されるのです。
② 過大な設備提供の禁止
ガス会社が賃貸オーナーへ
エアコン
インターホン
宅配ボックス
など、本来ガスと無関係な設備を無償提供する行為が規制対象になります。
つまり、
ガス契約をエサにした“実質的なキックバック”ができなくなる
ということです。
③ 契約の適正化
長期拘束契約や過度な違約金設定も問題視されています。
オーナーがガス会社を変更しにくい構造が是正される方向です。
不動産オーナーへの影響
1. 利回り構造が変わる
今まで
設備費はガス会社負担
表面利回りは高く見える
という設計が可能でした。
しかし今後は、
設備費は原則オーナー負担
もしくは透明化された上で入居者に説明が必要
になります。
結果として、新築アパートの事業収支は確実に厳しくなるでしょう。
2. 既存物件はどうなる?
既存契約についても、更新や変更時に影響が出ます。
特に注意すべきなのは、
売却時の重要事項説明
ガス契約の引継ぎ条件
違約金条項
です。
買主がこの点を理解していないと、
価格交渉材料に使われる可能性があります。
3. 投資判断基準が変わる
今後は
都市ガスエリアか
LPガスでも料金水準は妥当か
ガス会社との契約内容は適正か
が、物件評価の重要ポイントになります。
単に「利回り8%」と書いてあっても、
ガススキームで成り立っている数字なら要注意です。
これからの賃貸経営戦略
✔ 新築の場合
ガス会社任せの設備提供は避ける
収支計画に設備費を正しく織り込む
都市ガスとの比較検討
✔ 既存物件の場合
契約内容の再確認
設備費残債の有無確認
将来の切替可能性の検討
結論 ― 業界の健全化は始まった
今回の改正は、入居者保護という観点では前向きな一歩です。
同時に、
利回り至上主義
表面数字だけを見る投資
「大手だから安心」という思考停止
に対する警鐘でもあります。
これからの時代は、
誰が最終的にコストを負担しているのか
を理解し、説明できるオーナー・投資家だけが選ばれます。
数字の裏側を読めるかどうか。
そこが分岐点になるでしょう。